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▶ 大山 曜(おおやま よう)
ZIZZ STUDIO所属・サウンドプロデューサー
作曲・編曲家、録音・ミキシングエンジニアとして幅広く活躍、歌姫の楽曲ではギターとベースの演奏も担当している。
・お気に入りの曲:悪果/富士葵
▶ 川住かつお(かわすみ かつお)
ZIZZ STUDIO所属・作詞家
【フェアリーフェンサー エフRefrain Chord】では、歌姫楽曲12曲の作詞を担当。
・お気に入りの曲:影と境界/海月咲希
▶ 江幡育子(えばた いくこ)
ZIZZ STUDIO所属・作詞家
【フェアリーフェンサー エフRefrain Chord】では、監修、制作進行。
歌姫楽曲の【燐火/織田かおり】のラテン語監修も担当。
・お気に入りの曲:燐火/織田かおり
▶ 北野 誠(きたの まこと)
コンパイルハート・プロデューサー
・お気に入りの曲:祈りの音色/石川由依

もう全部ZIZZさんに相談してみよう

――この企画を受けようと思ったきっかけは?
北野 誠
(以下・北野)
たぶん最初からアクロバティックな印象を受けられたかなと思うんですけど、 『マッシュアップ』(異なる楽曲同士を合体させて、1つの曲として成立させる音楽の手法)という企画を聞いていかがでしたでしょうか。
大山 曜
(以下・大山)
非常に画期的なご提案を……。
白と黒の2人の歌姫の曲が合体するような企画ということで、正直言うと全くピンときていなかったんです。
ただ、他社さんに断られたという話で「断られるくらい大変なことなんだけど、相談にのってくれるか」というような話でしたよね。
北野
そんな持ち込みでしたね。
最初、別のサウンド会社さんに持っていったのですが「やりたいことは分かった。ただ1対1だったら実際に世の中にもあるからわかるけれども、それを3対3、6対6なんて、構想としては面白いけれども根本的に不可能だろう」と言われまして。そこでは「1曲作って他はアレンジにしたら」など色々提案をもらったんですけれど、やりたいこととは違って。
こういったお話を面白がってくださるところっていうのをイメージしたときに、ZIZZさんが浮かんできたんですよね。もともとBGM等をお願いしようとは思っていたので、「もう全部ZIZZさんに相談してみよう」という流れでした。
大山
話を聞いたときに「まあ、それは大変だろうな」というのは、薄々感じたんですよね。
で、最初から6曲×6曲をやりたいと言われてまして。
北野
まずそこが、スタートでしたね。
大山
「引き受けるとは言えないけれども、まず1対1を作るので聴いてみて貰えませんか」ということで、白と黒の1曲同士を合体させた2バージョンをお聴かせして判断していただこうと。
それでダメだったらクビをきられてもしょうがないなと思っていたんですけれども、すごく気に入っていただいて。
白のメジャー進行の曲と黒のマイナー進行の曲を合わせるために、いろんなテストをしてアレができたんですけれど、とにかく最初の1曲×1曲をやったときは、非常に感激しました。
正直言って「あ、これは面白いな」と実感しましたね。作って初めて気づいた部分もすごく多かったですね。
ただ、「皆さんにも気に入ってもらえたので、じゃあ次2、3とやってください」と言われたときにはちょっとビビりましたけど。
北野
その1曲×1曲が終わったあとに、「じゃあ2曲×2曲までは行ってみましょう」という感じで、段階踏みましたよね。「いったん、どこまでいけますかね」みたいな(笑)
大山
また、お上手なんですよ、北野さんが(笑)無理には言わない。
「まずは2やってみませんか? 3できますよね……?」っていう感じで。
こちらもノせられる感じで、気が付いたら6作らされてたっていう。
面白いって言っちゃ何ですけど、やりがいのあるプロジェクトだったなとすごく実感しています。
全員

組み合わせたときに重なり方が全くわからない

――歌詞を作る時に意識した事、また曲を差別化するために意識した事はありますか。
江幡育子
(以下・江幡)
仮仮歌詞は最初『ららら』でやっていたんですけれど、「組み合わせたときに重なり方が全くわからない」って言われたんです。
それで、一旦仮の歌詞を組んでみたんですが「全然違う言葉を乗せてしまうと言葉が重なったときに、どっちも聞こえなくなっちゃう」って気づいて……。川住さんに「韻踏んで」みたいな(笑)
川住かつお
(以下・川住)
最初は白3曲、黒3曲の6曲までがきてて、「これからあともう6曲くるよ」って言われて。
「え、受けちゃったんだ……。ああ、大山さん結局白黒6曲ずつ全部書いたんだ」みたいな。
全員
爆笑
大山
それは、受けますよ(笑)
江幡
「できるか、わかんないけどねー」っていうのを、ずっと言ってて。
川住
でも「曲がきちゃったら書くしかない」という感じで。
今回は江幡さんに仮歌詞を書いてもらってて……普通の歌詞制作としてはこれも結構めずらしいですよね。
江幡
ないですね。川住さん側で仮歌詞を全没に近い形にして最初から構築し直しちゃったので。
開発チームのみなさま的には、聴き慣れていたバージョンと全く違ってしまって驚く部分もあったと思うんですけど、そこはあまり否定的にならずに受け止めてくださって。
北野
そうですね。こちらとしては一段・二段、よりあがってきたなあっていう印象を持っていて。
川住
音が重なるところはきっちり言葉を重ねたりしたほうが理想的なんですけど、さすがにメロディの数が多いので無理だなと思って。韻を踏むというほどでもないんですが「重なる音符のところは、なるべく母音だけでも合わそう」っていうことをやりましたね。
江幡さんからオーダーがあったからというよりは、6曲×6曲っていう組み合わせの数は、たぶん今後どんなコンテンツでも、やらないだろうなと思って。
「だったら、ここでちょっと最高点を叩き出しておきたいな」って思ったときに、じゃあできるアプローチが何かっていうので……。……大変でした。
全員
おお……!
北野
こちらとしてはフレーズの「共鳴」を合わせてくださったところで気持ちよくなったりとか、そういう感覚を受けましたね。
川住
「共鳴」は作品のキーワードの中にあって「これは曲のテーマも合ってるだろうな」と思って「共鳴」が入れられるポイントを探すところから始まりましたね。
「きょ・う・め・い」って音が4つでも捉えられるし、「きょー・めー」って2つでも捉えられるので、やりやすい言葉ではありました。
江幡
例えば、白の【永遠の物語】が4つ「タン・タン・タン・タン」ってリズムが鳴っていて、黒の【悪果】が「ター・ター」って2つ鳴っているのですが、「きょ・う・め・い」と「きょー・めー」って歌っているのが組み合わさるから、リズムが違っている曲でも一緒の言葉をそこにハメられると。
北野
なるほど、そういうことなんですね! 素人にもわかりやすい!

違う喜び、違う感動が生まれる瞬間

――マッシュアップの作成について、そして曲同士がマッシュした時の心境を教えてください
大山
この「合体させる」というところの解説ですね?
それを公にしていいんですかね? 真似されちゃうかもしれないですけど(笑)。
今回、白の歌姫と黒の歌姫の2人の楽曲を合体させると言うことで、通常の作曲にはない縛りとして、まず『テンポが一緒』。それと『構成』ですね。
テンポは一緒じゃないとズレてしまいます。構成は、平歌A・B、サビC・Dになっています。
A・B・C・D各16小節っていうのが基本になっているんですけれど、それを全部の曲で同じになるように展開している。そうすると、Cのサビのところでガツンとみんな盛り上がるようになります。
合体したときに気持ちよく組み合わさるように、そうなっているわけです。
北野
『Aメロ、Bメロ、Cサビ』という構成はよく聞きますが、なぜそのような構成にしたんでしょうか。
大山
ABCという曲も世の中にはいっぱいあると思うんですけど、今回はCだけだとマンネリ化するので、C・Dをサビとして考えてます。
「ワッと世界が開けて、みんなが歌いたくなる」その力を持っているのはCなので、まずCがサビでいいと思うんですけど、Dでひと展開したんですよね。
CとDは関連付いているので、ガラッとは変わらないですけど、より世界が広がったり。
でもそういう意味でCとDが両方活きるようになっているんじゃないかなと思います。
北野
確かに、見せ場というか雰囲気が変わりますよね。
大山
そうですね。Dがより見せ場になっている曲もあります。
白はCが音が詰まっていてDが抜いてあって、黒と白はそれが逆だったりする曲もあって。
音数を同じにしちゃうと先の歌詞の問題が出ちゃうんで、なるべく世界が展開することによって言葉数を変えたいという狙いはあるかもしれませんね。
北野
なるほど、ありがとうございます。
大山
あとは『キー(音階)』。これも違うとズレちゃいますので、キーも同じ。
ドミソを基準とした明るいメジャー進行を、白の歌姫楽曲に。
ラドミを基準とした悲しい雰囲気のマイナー進行は、黒の歌姫楽曲に。
『平行調』と言うんですけれど、キー、コードに関してはそこで始まるようになっていて、それが合体したときに気持ち良く聴こえるようになります。
この条件を満たすように曲を作っていくということなんですが……その縛りの中で「全12曲を作る」かつ「全12曲がなるべく違う曲になるように」というのは非常に大変でした。
テンポが変わったりすれば全然違う色になるんですけれど、同じテンポで違う風に聴かせるというのが難しかったですね。
合体させる上でのポイントは……先の歌詞の件とも通じるところがあるんですけれども、『マッシュアップ』というものをいろいろ研究しまして。
ミュージカルでも2つの曲を合体させたりするということもあるんですけれども、1つの曲を歌った時に次の曲が追っかけで入ったり、過去の名曲でマッシュアップされているものも、うまい具合に2人の役割が分担されている曲が多いので合体させ易いんですね。
なるべく重なる音が少ない方が歌詞も聞き取り易いですし。
北野
掛け合いになったり、とかって言うことですよね
大山
そうです掛け合いですね。
そういったものは、世の中には「あるには、ある」んですけれども、それをやるとどうしても隙間が多くなって、1曲としての力が弱まっちゃうんです。
その辺はすごく悩んだんですけれども、そういう制約をなくして「両方が重なってもいいか」と(笑)
そうして作ったテスト版が非常に良くて、合体することによる違う喜び、違う感動が生まれる瞬間というのがすごくあったんです。なので、合体を避ける方向ではなく、あえて合体させてしまおうと。
それを6×6曲合体させて、何とかやり抜いたんですけれども12曲のイメージが違う風に聞こえたかどうか……。
あとは、異なる2つの歌詞が同時に鳴ったら当然何を歌ってるかわからなくなっちゃうのですが、僕はそういう歌詞側のことは考えないで作っちゃったんですけれど(笑)
北野
もともと、大山さんから言われてたんですよ「それ曲数が少ない時はいいけれど」と。
「2×2曲まではいけると思うけど、キーとテンポが同じだから3曲、4曲と、なっていくに従って絶対似ちゃう。
そこをなんとかして違う曲に聴こえるように頑張ってみようとは思うけど」みたいなお話はいただいていて。
それを段階的にやっていって、やっぱり制作後半は「こことここはフレーズ似ているように感じる」という指摘をさせていただいたような気もしますが、楽曲自体はどれも素晴らしいと思いました。
大山
あとは12人そうそうたるメンバーの方たちが歌われていますよね。
その方たちの持ち味を生かすというか、歌ったときに楽曲としてしっかり成り立たないといけない。
盛り上がるところは盛り上がって、感動させるところ感動させて……。
それができないといけないので、とりあえずまずは12曲をしっかり作る。合体はやってみてから……と。
曲ができた後で一度6通りの合体は試すんです。
歌詞は多少重なっちゃうけど「これでいいかなあ」って僕の段階では一旦OKにして、それを北野さんに聴かせて、と繰り返して12曲がやっと出来上がりました。
だから、いつもの作曲の作業よりは、この時点で何段階かあったわけです。
北野
曲ができた後で一度6通りの合体は試すとのことですが、どちらの曲を調整されるんですか?
大山
それをどうしようかと思ってたんですけれど……。
例えば、白1をベースに、黒1を掛け合わせる合体曲を作る時。
白1っていう曲を単体で見ると、それはやっぱりバックの音とメロディーがとても気持ちよく出来ているわけですね。それに黒1を合わせる、と。そのときに白1をいじっちゃうと白1の整合性が崩れちゃうので、黒1だけをいじるように。黒1の方を白1に辻褄を合わせるようにしました。
なので、場所によってはバックのコード和音がズレてるポイントはひとつひとつ修正して気持ちよく混じるようにしています。
サブメロだとこれを邪魔しないように作るんですけど、マッシュアップだと相手方をある程度いじらせていただいている場所はありますね。でも、そこが衝撃的だったりしました。
北野
では「いいかなあ……」のパスを受けてしまった状態っていうのはどうでしたか(笑)
川住
そうですね……大山さんに頼んで譜面を作ってもらったんですよ。
12曲分が一気に見られる譜面。
北野
これは具体的にはどういうものなんでしょうか。
川住
縦に白黒の全12曲の譜面が並んでいて、全曲の譜面が一気に見られるようになっています。
なるべく母音を揃えているのは、この縦の音符が揃っている部分ですね。こんなの、なかなかないよね。
江幡
というか初めて。
川住
サブメロがある曲とかは、メインメロとサビメロが一緒の譜面があったほうが書きやすいなとは前から思っていて。
今回は、それの応用みたいな感じです。
江幡
応用も応用。基本メインとサブの2本ラインのものが12本になるっていう……
大山
先に少し話したんですが『サブメロ』って言う考え方がありまして。
普通の曲でもメインの人が歌っていて、サブの人がコーラス的に違う歌詞を紛れ込ませる……そういった曲はよくあると思うんですけれども、今回はメインとサブっていうのはダメで。
「メインとメインで、サブメロっぽくないように」ということを、北野さんから重々言われていて。
とにかく白黒の両方が『対決』する。曲も歌詞も両方がちゃんと対等じゃなきゃいけないっていう。
川住
ずっとメロが鳴っているって言う状態なわけじゃないですか。休むところがないんですよね。
だから、この密度がずっと続いていると言う感じでしたね。
江幡
合体した状態を「一方が歌っている間、一方を休ませる」ように出し入れしちゃうと、1曲と1曲にバラしたときにお休みが多い曲になっちゃうんです。1曲の状態だとスカっとしちゃうから無理なんですよね。
大山
そうなんですよね。そこは初めての挑戦であり、皆さんどう聴いていいのかっていうことはあると思うんですけれど。ハマると非常に心地よい衝撃になるので、そこをぜひ味わっていただきたいなと思います。

時代考証的なところまでやりましたしね

――楽曲を作るうえで意識した点、苦労した点を教えてください。
大山
作曲的にはマンネリ化しないようにするのが1番大変でしたね。最初は色んなバリエーションを考えられたんですけれど……。アップの曲、バラード、ドスが効いてたり、楽しそうだったりとか。そういうのを12パターン同じテンポの中で出すっていうのが難しいっていう。
辛かったですけれど、後半はそこまで細かく考えずに楽曲重視で行こうって切り替えていったかもしれないですね。
その分、こっち(作詞)が苦労する。「まぁ、頼むよ」って言う感じで。
北野
共同作業的な部分があったからこそ「補い合う」じゃないですけれども、お互いの力が上手く組み合わさって1つのいい楽曲になって、それがさらにマッシュアップに繋がったのかなって気も個人的にはします。
大山
今回は1人で12曲を担当したっていうのも大きかったと思います。
ここまで大変になると、何人かで曲を分担する事はよくあるんですけど。
やっぱり2人で全部やり切ったっていうのは、作品のイメージを統一させるというところへ繋がったかなと。
江幡
時代考証的なところまでやりましたしね。
「汽笛って言う言葉を使いたいんですけれど、汽車はありますか」とか。
「【フェアリーフェンサー エフ】の世界観的にアリですか」みたいな問い合わせをしたりとかもね。